問題社員対応について~休職と復職を繰り返す社員~

昨今は精神疾患を抱える社員を雇用する企業様も少なくありません。

特に中小企業にとって、社員の私傷病による休職が長期化すれば他社員への仕事上の負荷が大きくなり、採用の判断にも影響があります。

 

企業様からの相談で「休職を繰り返す社員がいて困る」といった声も少なくありません。

もちろん、休職する社員側にやむを得ない事情もあるでしょう。

この場合において会社としてどのような法的対応が可能か、やむを得ず解雇の選択をとることが可能かについてお話していきます。

 

 

まず、私傷病を原因とする欠勤は労働契約の債務不履行であり、これが長期間にわたる場合には重大な債務不履行として普通解雇事由に該当します。

通常、会社の就業規則では普通解雇事由として「身体または精神の障害等により業務に耐えられないとき」と規定していることが多いため、普通解雇の判断も相当と思われるかもしれません。

しかしながら、私傷病を理由とした長期欠勤の場合には、会社としてまずは「休職」を検討をすべきです。

ほとんどの会社が就業規則で休職の規定を設けていますが、休職規定のない会社も存在します。このような場合には、休職規定がなくても一定期間(会社規模にもよるが2~3カ月間)の欠勤は許容すべきであり、普通解雇が直ちにできるということにはなりません。普通解雇には社会的相当性の要件が必要であり、病気を改善する機会を付与するということが会社には求められるからです。

 

それでは休職後の対応について、会社としてどのようなことをすべきでしょうか。

この点、休職後の復職の判断が重要になります。

 

復職にあたっては、休職期間満了時までに、通常労務提供が可能なまでに私傷病が治癒していることが必要になります。

 

もし仮に期間満了時に治癒していない場合には雇用期間を終了させるかどうかの問題になりますので、慎重に判断することになります。

具体的には、主治医の診断書、主治医との面談、産業医からの意見書等により復職可能かどうか、会社として判断をします。

 

そして、休職期間満了後、繰り返し休職をすることは許されるのでしょうか。

 

これに対する回答としては原則としてNOになります。

 

私傷病欠勤は基本的には労働者の債務不履行であり普通解雇事由であるけれども、雇用保障のため例外的に解雇猶予制度としての休職に付しているという状態であるからです。

このため、何度でも休職に付さなければならないということには基本的にはならないと考えられます(この点、会社として具体的事情に応じて柔軟に対応すること自体は可能です)。

 

したがって、休職期間満了時に通常労務提供が可能なまでに私傷病が治癒していない場合、やむを得ず会社として普通解雇の判断をすること自体は相当といえます(ただし、私傷病の治癒の判断は慎重に行う必要があります)。

 

また、社員の中にはそもそも体調不良の原因を私傷病でなく業務上のストレスであると主張する者もいるかもしれません。

この場合、会社として業務災害かどうかの判断は業務起因性と業務遂行性の判断を求められますが、特に精神疾患の場合には困難なことが多いです。このような場合には労働基準監督署に判断を委ねるべきといえます。

 

休職を繰り返す社員について今回はお話してきましたが、会社として雇用契約を終了するかどうか、その時期の判断は非常に難しいといえます。

 

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