会社の中で横領をした社員が!どうしたら?

1 横領行為の調査

会社の中で横領をした社員がいると思われた場合、まず、会社としては横領行為の有無につき調査を行うべきです。

このときに重要になるのが、客観的証拠の収集です。横領があったとされる期間の請求書、領収書、伝票等、金銭の出入りを裏付ける資料や、その期間中の通帳の履歴との照合、使途不明金の存在や金額について、綿密に調査をすることが重要です。

訴訟においては必ず客観的証拠の有無が重要になり信用性の高い証拠と扱われます。それを補完するものとして人証(証言等)があると考えてください。

このため、客観的証拠を収集後に本人以外の関係者からの事情聴取をしていくことになります。客観的証拠に沿う供述があれば、さらに横領行為の存在は明確になっていきます。

事情聴取にあたっては、いわゆる5W1H(誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どのように)を意識してできる限り具体的な事実を聞きだすことを意識してください。

これらの過程につき慎重に行った上で本人に横領行為の有無につき、事情聴取する機会を設けることをお勧めします。

このとき、客観的証拠等が乏しいにもかかわらず一方的に横領があったと決めつけて叱責するなどしてしまうと、反対に会社側が名誉棄損やパワーハラスメント等があったとして責任を問われかねない事態となりますので、注意が必要です。

最終的に事実調査の結果として聴取書を作成し、証拠化します。

2 調査を拒む社員がいた場合どうするか?

本人が事情聴取に応じない場合にはどうしたらいいでしょうか。

このとき、会社として、粘り強く聴取に応じるよう説得することはできますが、行き過ぎると本人の供述自体の信用性がなくなってしまうため注意が必要です。

この点につき、調査を拒むこと自体で懲戒処分を下すことはできるのでしょうか。

富士重工業事件(最高裁三小昭和52年12月13日)では、社員が他の社員の企業秩序義務違反に関する事実調査に協力する義務を負うのは、事実調査に協力することが①社員の職責に照らしてその職務内容となっている場合、または②調査対象である違反行為の性質・内容、違反行為見聞の機会と職務執行の関連性、より適切な調査方法の有無等の諸般の事情から総合的に判断して、労務提供義務を履行するうえで必要かつ合理的であると認められる場合に限られるとされています。

この裁判例の規範に該当するかどうか、事案ごとの個別判断を要しますので、調査に応じないことをもって即懲戒処分を下すことは控え、慎重に動くことが必要です。

3 会社としての処分の内容

調査の結果、社員が会社の金銭を着服していた場合には、金額の多寡にかかわらず企業秩序に与える影響が大きいため、懲戒解雇を含む重い処分を課すことが可能とされます。

最終的に行為態様、損害額、損害賠償の有無、当該社員の地位・立場、過去の処分例との均衡等を考慮する筆湯尾がありますが、故意に横領を行った場合には企業秩序を回復するために懲戒解雇ないし諭旨解雇という重い処分を検討せざるを得ないことが多いでしょう。

懲戒解雇の場合には退職金の不支給を伴うことが多いため、トラブルに発展することがあります。このため、普通解雇や自己都合退職にとどめるといった対応でリスクを回避することも検討が必要です。

刑事告訴についてはさらに慎重に判断が必要です。告訴をすれば、社員の前科に影響があり社会復帰が困難になるほどの影響力があります。

会社としても、横領行為が公になることで社外に対する信用低下というリスクも伴います。

もっとも会社として毅然とした対応で臨む必要があると判断する場合や、社会的影響を考慮して告訴相当という場合もありますので、この点は弁護士に相談し、事前にどのような影響があるのか等を協議の上で進めることが重要と思います。

 

以上、横領をした社員がいた場合の会社の対応についてお話してきました。

横領行為の認定は訴訟になった際のことも考慮して、調査の段階から慎重に証拠の収集が必要になります。これは訴訟のプロである弁護士に相談することで、万全を期すことが可能です。

弊所ではこの点を含め顧問サービスの一環として、会社側のサポートを行うことが可能です。

横領行為の疑いを感じ、お悩みの企業の皆様、弊所へ一度ご相談ください。

関連記事はこちら