定年後再雇用社員の雇止め-継続雇用制度における更新拒否

 1 定年制とは?

定年制とは、労働者が一定の年齢に到達することにより労働契約を終了させる制度のことをいいます。

労働者が一定年齢に達したからといって各労働者の労働能力が一様に減退するわけではないにもかかわらず、一定年齢の到達により労働能力を終了させる定年制については法的に有効なのでしょうか?

この点につき、秋北バス事件判決(最大判昭和43・12・25)では就業規則によって定年制を定めた事案において定年制は人事の刷新・経営等企業の組織および運営の適正化のために行なわれるものであって、一般的に言って不合理な制度ということはできないとして定年制の定めを有効としています。

しかしながらアメリカでは1967年の雇用における年齢差別禁止法、EUでは年齢差別禁止を含む2000年均等待遇基本枠組み指令等により定年制を含む年齢差別は原則として禁止されるなど、人権保障および雇用政策の観点から年齢差別を禁止する動きが先進諸国の大勢となっていることには注意が必要です。

2 高年齢者等雇用安定法の内容

(1)定年の定めについて

高年齢者雇用安定法は高年齢者の安定した雇用確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、高年齢退職者への就業機会の確保などの措置を総合的に講じ高年齢者等の職業の安定その他の福祉の促進を図ることを目的としています(1条)。

この法律によれば、事業主が定年の定めをする場合には当該年齢は60歳を下回ることはできません(8条本文)。ただし、高年齢者が困難な業務として厚生労働省が定める業務に従事している労働者についてはこの限りでないとされています(同条但し書き)。

このように日本の現行法では原則として定年は60歳以上とすることを義務付けることで60歳までの雇用保障を政策的に要請しており、上述の8条は強行法規とされています。

そして、事業主が60歳を下回る年齢を定年として定めた場合には定年の定めのない状態になると解されています(牛根漁業協同組合事件 福岡高宮崎支判平成17・11・30労判953号71頁)。

(2)高年齢者雇用確保措置

65歳未満の定年の定めをしている事業主は65歳までの安定した雇用を確保するため、①当該年齢の引き上げ

②継続雇用制度

③定年の定めの廃止

のいずれかを講じなければなりません(9条1項)。実際には、これらのうち、②が多く選択されています。

この9条1項に反した事業主には厚生労働大臣が助言・指導を行うことができ、助言指導をしても違反している場合には勧告、この勧告にも従わない場合には公表ができます(10条1、2、3項)。私法上の効力としては選択的措置義務を定めたものであり、直ちに私法上の効力が発生するものではないと考えられています。

また、2020年の高年齢者雇用安定法改正により、70歳までの就業機会の確保を図る目的で65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置を講じることが事業主の努力義務とされました(2021年4月施行)。

このため事業主は、

  • 定年の引き上げ、
  • 65歳以上の継続雇用制度
  • 定年の定めの廃止、

または過半数労働組合の同意を得て

  • 当該高年齢者の希望により新事業を始める高年齢者と事業主との間で業務委託契約を締結し就業を確保する措置
  • 当該高年齢者の希望により

㋐事業主が実施する社会貢献事業

㋑事業主が委託して他の団体等が実施する社会貢献事業

㋒事業主が必要な資金提供等の援助を行い他団体が実施する社会貢献事業について当該事業の実施者が当該高齢者との間で業務委託契約を締結し就業を確保する措置

を講じることにより、65歳から70歳までの安定した雇用または就業を確保するよう努めなければならないとされました。

3 継続雇用制度における更新拒否について

上述の65歳以降の継続雇用制度が取られているケースについて定年時に継続雇用が拒否されその違法性が争われる事件が増えています。

現状、裁判例は

  • 雇止め法理(労契法19条)の類推適用の枠組みで継続雇用の合理的期待の有無を判断するもの(定年後再雇用の期待に合理性が認められる場合には再雇用拒否に客観的合理性・社会的相当性がない限り再雇用されたものと同様の法律関係になるとするもの)
  • 定年延長拒否は無期労働契約から有期労働契約への変更の問題であり労契法19条の類推適用の基礎を欠くとするもの

に分かれています。

このように継続用制度における更新拒否については裁判例の中でも考え方が分かれるところでもあります。継続雇用制度における更新拒否について法的な判断について誤ると裁判等へ発展することもありますのでぜひ専門家である弁護士へご相談ください。弊所の顧問サービスでは、この点につき的確に法的アドバイスを提供することが可能です。

関連記事はこちら