建設業 ①JV(ジョイントベンチャー)

今回は建設業でよくみられるJV(ジョイントベンチャー)と、JVが下請業者を使う場合の注意点についてお話していきます。

1 JV(ジョイントベンチャー)とは?

JVとは、複数の建設業者が一つの建設工事を受注・施行することを目的として形成する事業組織体のことをいいます。

JVの種類は、以下の2つに大別されます。

共同施工方式 ・・・JVを構成する建設業者が共同で施行に携わる方式

これは、あらかじめ定めた出資割合に応じて各構成員が資金、人員、機械等を拠出して共同施工する方式です。
外から見ると完全に1つの建設業者となり責任体制が複雑かつ曖昧になるため、労働安全衛生法5条1項で事業者の1人を代表者と定めて都道府県労働局長へ届け出なければならないと規定されています。
損益計算の仕方としては共同企業体としての会計単位を設け合同(各構成員の企業会計への帰属は各構成員の出資比率に応じたもの)で行い、利益は各構成員の出資比率に応じて配分されます。
代表者が施行体制台帳等の整備を行うことになります。

分担施工方式 ・・・工事を複数の業者が工区や工種別に分担して施行する方式でそれぞれが独立して責任を負う方式

工区ごとの責任体制となりますが、最終的に他の構成員の施行した工事についても発注者に対し連帯責任を負うことになります。
損益計算は各工区ごととなり、構成員の中に利益を上げたものと損失を生じた者が出る可能性があります。
各業者が施工体制台帳等の整備を行います。

JVの形態は、以下の2つに大別されます。

ア 特定建設共同企業体(特定JV)

大規模かつ技術難度の高い工事の施行に関して技術力等を結集することにより工事の安定施行を確保できる場合等、共同事業体による施工が必要と認められる場合に発注される工事ごとに結成される共同事業体をいいます。
なお、この企業体は公共工事の場合には各工事の発注に関する広告が行われた時点で発注機関に対して共同企業体の結成を届け出ることになります。
出資率の最も多い企業が幹事会社(代表者)となり工事受注施行について主導します。

イ 経常建設共同企業体(経常JV)

中小・中堅建設業者が継続的な協働関係を確保することによりその経営力施工力を強化する目的で結成する共同企業体をいいます。

2 JVが下請業者を使う場合の注意点とは?

JVにおいて下請業者を使う場合がありますが、この場合には以下の通り、法的な問題が出てきますので、この点、注意が必要です。

(1)出資比率の変更

例えば、下請業者であるAがJVの構成員でもある場合には、JVの構成員としての企業Aと下請け業者としての企業Aとの下請け契約となり、これは企業Aが同一の下請け契約における双方の当事者となるケースに該当してしまいます。

この場合にはただちに法令違反となるわけではありませんが、出資比率に比べてAが施行の多くを手掛けることになる点、他構成員が実質的な施行を行わずに出資比率に応じた利益を得ることになる(ペーパーJV)など、JVの制度趣旨に反するとされています。

したがって、一部の構成員の担当範囲が広くなると予想される場合は、当該構成員の出資比率をそれに見合うように変更した上で施行する必要があります。

(2)建設業法との関係

建設業法22条(※1)では一括下請負が禁止されています。この趣旨としては、発注者及び元請人の下請人に対する信頼を裏切るという点にあります。

しかしながら、同条3項において、発注者からの承諾があれば一括下請負も可能となっています。

※1 建設業法

(一括下請負の禁止)

第二十二条 建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす

なお、公共工事について、一括下請けは全面禁止となっています(※2)。公共工事において発注者は経営事項審査等の厳格手続により選定されているので仮に一括下請けが認められてしまうとそうした厳格な手続きを取る意味がなくなるためです。

※2 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律

(一括下請負の禁止)

第十四条 公共工事については、建設業法第二十二条第三項の規定は、適用しない。

 

以上、JVについて今回はお話してきました。
JV自体は建築業者においてよく取られる手法ですが、トラブルに発展した場合にはその形態等からみても法的に複雑な面があり、企業のほうで法的問題点について把握することは困難でしょう。
弊所では、建築業者様が抱える法的問題について、弊所の顧問サービスにおいて、丁寧かつ迅速に、各種法令のリサーチを含めた法的アドバイスが可能です。
建築業者の皆様、法的トラブルでお困りの際には一度弊所へご相談ください。

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