建設業 ②一括下請負の禁止

今回は建設業で問題になることがある、一括下請負の禁止についてお話していきます。

建設業では下請契約は多く用いられる手法ですが、安易にすべての工程、作業につき下請契約を締結してしまうと、建設業法上の制限があり行政処分等の対象となりますので注意が必要です。

1 建設業法上の制限規定とは?

建設業法では、建設業者は請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせてはならないとされ、特に公共工事においては、たとえ発注者の承諾があったとしても全面的に禁止されています(建設業法22条1項、4項)。

どのような場合が「一括下請負」に当たるかというと、以下の①もしくは②に該当する場合であって、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与していない場合に、一括下請負に当たるとされています(平成28年10月14日付国土交通省通知「一括下請負の禁止について」より抜粋)。

 

①請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

「実質的な関与」といえるためには、具体的には、施行計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導、発注者等との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応、請け負った建設工事全体のコスト管理、近隣住民への説明といったことを全て行う必要があります。

2 一括下請負禁止には例外がある?

民間工事(共同住宅を新築する建設工事を除く。)の場合、元請負人があらかじめ発注者から一括下請負に付することについて書面による承諾を得ている場合は、一括下請負の禁止の例外とされていますが、次のことに注意が必要とされています。

 

ア 建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要。発注者の承諾 は、一括下請負に付する以前に書面により受けなければならない。

イ 発注者の承諾を受けなければならない者は、請け負った建設工事を一括 して他人に請け負わせようとする元請負人であり、下請負人が請け負った建設工事を一括して再下請負に付そうとする場合にも、発注者の書面による承諾を受けなければならない。 (当該下請負人に建設工事を注文した元請負人の承諾ではないことに注意)

また、事前に発注者から承諾を得て一括下請負に付した場合でも、元請負人は、請け負った建設工事について建設業法に規定する責任を果たすことが求められ、当該建設工事の工事現場に同法第26条に規定する主任技 術者又は監理技術者を配置することが必要。

3 制限規定に違反してしまった場合にはどのような制裁があるか?

上記に違反し、受注した建設工事を一括して他人に請け負わせることは、発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る行為であることから、国土交通省として、一括下請負の禁止に違反した建設業者に対しては建設業法に基づく監督処分等により、厳正に対処することとされています。

また、公共工事については、一括下請負と疑うに足りる事実があった場合、発注者は、当該建設工事の受注者である建設業者が建設業許可を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及び当該事実に係る営業が行われる区域を管轄する都道府県知事に対し、その事実を通知することとされ、建設業法担当部局と発注者とが連携して厳正に対処することとしています。

監督処分については、行為の態様、情状等を勘案し、再発防止を図る観点から原則として営業停止の処分が行われることになります。

なお、一括下請負を行った建設業者は、当該工事を実質的に行っていると認められないため、経営事項審査における完成工事高に当該建設工事に係る金額を含むことは認めらないとされています。

今回は建築業法の一括下請負の禁止についてお話してきました。
建築業法の当該規定に違反した場合、企業には営業停止処分などの多大な不利益処分が科される可能性があります。
ただし、これら法令に違反するのかどうかの判断は法律の解釈等も絡み、企業自身では困難です。
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