継続的売買契約の基本契約書について

当事務所の顧問業務では、契約書の作成、リーガルチェックも行います。
日常的な顧問業務の中心は契約書のリーガルチェックです。もちろん、各取引実態に合わせて契約書があるのが望ましいですが、継続的売買の基本契約書の中で必ず確認して押さえておきたい条項というものも存在します。
今回はそのポイントについて、お話していきます。

1.取引の適用範囲を明確にする

まず、取引の適用範囲を明確にすること、これが出発点です。

・期間、当事者、対象を明確にしているか
・個別契約と齟齬がある場合の優先関係を定めているか
・受注義務や発注義務が生じる契約かどうかを明確にしているか
以上を確認して明確にしておくことが必要です。

2.個別契約の成立時期、成立条件を確認する

次に、個別契約の成立時期、成立条件について明確になっているか、確認します。
民法改正後の原則として、承諾が相手に到達した時に契約成立(97Ⅰ)とされ、対話者間の契約については承諾期間の定めのない申し込みは対話が継続している間いつでも撤回できること(525Ⅱ、Ⅲ)が定められました。
商法509条1項においては、商人たる会社は平常取引をする者から営業の部類に属する契約の申し込みを受けた時は遅滞なく契約の申込みに対する許否の通知を発しなければならないとされています。
以上の法律の規定を念頭に、取引の実態に合わせて明確に契約書にしておくことが必要になります。

3.相殺予約についての定めがあるかを確認する

相殺予約についての定めがあるかも確認していきます。期限の利益喪失約款により弁済期を到来させる、又は弁済期にあるか否かを問わずに相殺することができるとして相殺を当事者が了解した形とする方法もありますので実態にあわせて検討します。

4.危険負担の規定も改正民法を踏まえて検討する

危険負担の規定も改正民法を踏まえて検討する必要があります。
改正後民法では危険負担の性質が変化しています。従前は双方契約から生じる債務の一方が債務者の責めに帰することができない事由により履行不能になった場合には反対給付義務消滅するとされていました。しかし、改正法では債権者に履行拒絶を認める制度へと変更(536Ⅰ)になっています。
また、債権者が債務者の履行不能を理由として反対債務を消滅させるためには解除の意思表示をする必要あります(541以下)。
特定物の売買の危険の移転時期に関して、目的物の引き渡しがあった時点以後に目的物が滅失損傷した場合債権者(買主)が危険負担をする規定が新設されました(民567Ⅰ)。

そして買主の受領遅滞中において目的物が滅失損傷した場合に危険が買主に属する旨の規定が新設されています(567Ⅱ)。
以上を踏まえて条項を検討しますが、実務上は引き渡し後に買主に危険が移転すると規定するのが一般的かもしれません。

5.所有権の移転時期について明確にする

所有権の移転時期についても明確にしておきます。
所有権の移転の時期は検品時、検収時、代金完済時とすることが考えられます。前2者が多いですが、買主に信用不安がある場合には代金完済まで所有権を留保することが考えられます。

6.納品・検査・受領について確認する

納品・検査・受領について、実務上はこれらの条項が非常に重要になります。

納品について

納品については、納品の時期、場所、履行に関する費用についての定めがあるかどうか、これを確認しましょう。
買主に受領拒絶があった場合の定めはあるかどうか(買主側の事情による納品拒絶の場合、当事者がどのような責任を負うのか)もあわせて確認します。なお、保存義務、履行の費用の増加は債権者負担(改正民法413Ⅰ・Ⅱ)となります。

検査・検収について

検査・検収についても重要な規定です。
検査の時期、検査方法、検査基準が明確になっているか?確認しましょう。
そして不合格品の取り扱い(完全履行請求に加え、損害賠償請求、解除、履行の際の費用負担の定め)についても以下に述べる民法改正や商法の条文を踏まえて反映しているか、確認が必要です。

商法526条では、商人間の売買では納品を受けた後遅滞なくその目的物を検査し、瑕疵や数量不足を発見した場合には直ちに通知する義務が課され、怠ると救済の権利を失うとされています。
これに関連して、瑕疵担保責任についての規定が特に実務上は重要です。改正民法では、契約不適合を理由とする債務不履行責任へ統合されました。
すなわち、従前、特定物売買は引き渡しにより売主の義務果たされ、瑕疵担保責任のみが問題となっていたものが、改正民法では債務不履行責任として統合されています。
買主側の救済手段としては特定物・不特定物を問わず、物の種類・品質または数量に関して契約不適合があった場合には買主の救済手段として代金減額請求(563)、履行追完請求権(562)が認められることになりました。

損害賠償請求については売主に責めに帰すべき事由がない場合は免責(415Ⅰ但書)され、解除については売主の責めに帰すべき事由の有無を問わず可能(541)となりました。他方、買主の責めに帰すべき事由がある場合には履行の追完や代金減額の請求をすることができない(562Ⅱ・Ⅲ)し、契約解除も認められない(543)ことになっています。
商人間の売買の場合には、上記商法526の適用により、検査義務、通知義務を怠ると、瑕疵担保責任に基づく請求のみならず債務不履行に基づく完全履行請求も行使し得ないことになりますので注意が必要です。

期間制限として、契約不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を売主に対して通知する義務が明記され、これを怠った場合には契約不適合を理由とする権利を失うという効果(566)が定められました。ただし商人間の売買については検査においてただちに発見できない瑕疵については引き渡しから6か月以内に責任追及可能(商法526Ⅱ)とされます。この場合、買主がこの期間内に瑕疵を発見できなければ過失の有無を問わず買主は売主に対して権利を行使できなくなると解されています。
権利行使により保存された債権は消滅時効の一般原則により引き渡しから10年または契約不適合を知ってから5年(166Ⅰ)で消滅します。
なお、数量または権利にかかる契約不適合には期間制限の適用はありません(種類または品質に関する契約不適合のみ上記取り扱いになるということになります)。

商法では、商人間の売買において売主から買主に引き渡された物品が目的物と異なり、または数量超過の場合には買主は当該商品及び超過分を売主の費用をもって相当期間保管するか供託することを要する(商法528・527条)とされていますので、この点についての規定があるかどうかも念のため確認します。

7.期限の利益喪失の条項があるかどうかを検討する

期限の利益喪失条項は、動産先取特権(321条)の行使等に必須です。破産手続開始決定があった場合などの民法137条所定の期限の利益喪失事由が生じる以前においても期限の利益を喪失させ債権保全に資するため、売主側は必ずこの条項を入れるべきです。
これに付随してですが、買主側に信用不安が生じた場合に以下⑧売主側の出荷停止条項も検討します。

8.出荷の停止条項について

当事者双方の責めに帰することのない履行不能の場合には反対給付の履行拒絶権が生じるとされると法律上は考えられますが、それ以外に売主が供給を停止できる場合を明確にすることも必要です。

9.契約不適合の場合の措置(履行追完、解除、損害賠償など)

上記の通り、従前の瑕疵担保責任の考え方は契約不適法責任へと変化しました。この改正点を踏まえて契約不適合責任の場合の措置が明確になっているかどうか、実態に合わない場合には修正する必要があるかどうかを確認します。

10.仕様基準・品質保証について

仕様基準・品質保証については買主側としては特に入れておきたい条項です。

11.代金の定め、支払い方法について

代金の定め、支払い方法についても基本契約書上明確にしたほうが良い場合には明確になっているかどうか確認が必要です。
実務上は売主が引き渡し義務を先履行し買主が一定期間ごとに取引を締めて期間の合計代金を後払いが多いですが、実態を聞き取り確認します。
包装費用、運賃、保険料などが大金額に含まれるかどうかを明確にする必要あり
支払い場所、支払い方法、遅延損害金の定めについても併せて条項として入っているかどうか、必要かどうか検討します。
その他、
・支給品・貸与品(有償、無償) の規定が必要かどうか?
・製造物責任の規定の必要性の有無
・知的財産権・第三者の知的財産権を侵害した場合の対応
・再委託の場合の条項
・有効期間・契約終了時の個別契約の扱い
・中途解約の定め
・裁判管轄
・反社会的勢力排除条項
・金銭債務の利率(改正民法404条によるが、約定により従前の利率に固定するかどうか)
・連帯保証
・協議事項
等々、一般的条項として入れるべき条項が入っているかどうかも検討する必要があります。

なお、細かい点ですが、継続的売買の基本契約書は印紙税法別表第一課税物件別表の第7号文書に該当(継続的取引の基本となる契約書)に該当し、1通につき、4,000円の印紙税が課税される(契約期間3か月以内で、かつ、更新の定めがないものを除く)ので、この点も注意しましょう。

継続的売買の契約書において、以上の事項について少なくともカバーできているかどうかの確認は必須です。
民法改正などの専門的知識が必要になりますのでぜひ当事務所の顧問サービスを利用ください。予防法務の観点から、当事務所が徹底的にサポートいたします。

 

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