問題社員対応について

企業様からのご相談の中で多いのが「うちの会社には問題社員がいて・・・」というものです。

特に中小企業にとって、問題社員を抱えることは企業利益の損失を招く事態にもなりかねず、頭の痛い問題といえます。

そこで、今回は「問題社員対応」について、特に問題社員の法的位置づけ(と法的な対応策)、そして予防策についてお話していきます。

 

前提として、労働者と使用者は労働契約を締結し、この労働契約に基づいて労働者は労務提供義務を負い、使用者は賃金支払義務を負っています。

労働者は労務提供義務という契約内容にそった使用者との約束通りに働くことを怠れば債務不履行ということになります。約束通りに働くこと、これは民法493条の本旨弁済に位置付けられます。

この本旨弁済を行わず債務不履行を生じさせること、これがいわゆる「問題社員」の法的位置づけになります。

具体的には能力不足勤務態度不良健康状態が不良私生活の素行に問題がある服務規律違反等々が挙げられると思います。

 

これらの問題社員に対してどのような対応が法的に考えられるでしょうか。

改善指導書や注意指導書の利用

改善指導書とは、具体的には会社から求められている成果や目標に対して達成できていないかを記載し、従前求められている成果目標を達成できていない場合にはそれより容易な目標を設定し必要な期間を定め、その定めた期間内に達成できたかを検証、面談を実施する(これを繰り返す)というものです。

注意指導書とは問題とされる具体的事実を記載し、会社として社員に注意指導書の内容を説明した上で改善を促すものです。この場合には社員の反応も含め確認して記録をしておくことをお勧めいたします。

改善指導書も注意指導書も、後日、どのような機会を付与して社員を改善しようとしてきたのか、その経緯を裏付けるものとなるため、書面で残すことが重要です。

懲戒処分

懲戒処分には、戒告、譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等の種類があります。労働契約法15条でこれらの制裁の定めは明示しなければならないとされ、使用者の懲戒権の行使が権利濫用にあたる場合には当該懲戒は無効になります。

このため就業規則には懲戒の種類と懲戒事由を詳細に定める必要があると言えます。

また、弁明の機会を付与しないと手続き違反で無効になることがあり得ますので、この点も留意が必要です。

その他、懲戒処分は要式行為ではないため口頭でも法的には有効ですが、後日言った言わないになることが多いため、トラブルを避けるためには書面化し文書を交付する方法を必ず取るようにすべきです。

懲戒処分は規則違反の種類や程度その他の事情に照らして相当なものでなければならず、不相当の場合には懲戒権行使濫用として無効になってしまいます。

問題社員に対しては上記の懲戒処分を下すかどうか、慎重に判断、検討します。

異動(転勤など)

勤務地が労働条件の内容のため転勤は原則として社員の同意が必要ですが、一定の要件を満たせば(契約締結の際に転勤命令に従う旨の誓約書を提出している、就業規則の定めにある等)転勤命令権を一方的に発することが可能です。

しかしながら業務上の必要性がない場合、他の不当な動機、目的をもってなされた場合、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、濫用と評価されますので注意が必要です。

問題社員に対しては転勤命令を発することについても検討していきます。

普通解雇

懲戒解雇のハードルは高いため、事案によっては普通解雇を検討します。

労働契約法16条には解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合にはその権利を濫用したものとして無効とするとされています。

客観的合理性とは普通解雇事由に実質的に該当することをいいます。これに加え社会的相当性の判断が重要になります。

具体的には改善の機会の付与、会社規模の大きさ(会社の規模が小さいと問題行動が与える影響が大きくなってしまう)を考慮します。

労働契約関係の終了を伴う普通解雇の判断は、事案に応じ、慎重に行う必要があります。

以上が問題社員に対する法的対応になります。

反対に、問題社員の問題行動を予防する方法としては研修や教育制度、モニタリング、所持品検査・身体検査命令等の実施が挙げられます。

モニタリングはパソコンの電子メール等を確認することになりますが、監視の目的、手段、及びその態様等を考慮して監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合にプライバシー侵害になるとされた裁判例(東京地判平成13.12.3)がありますのでこの点は注意が必要です。

所持品検査や身体検査については、まず根拠が明確であること(命令権が会社にあるかどうか)、そして実施方法によっては濫用と評価されることがありますので、注意が必要です。

一方、研修の実施は、社員側で無意識に問題行動(とくにセクシャルハラスメントやパワーハラスメント)を行っていたことを気づかせる機会にもなるため、予防策としてはかなり有用な方法といえます。

当事務所では、今まで企業様の懲戒事由の手続きに関与し顧問弁護士として裁判例等を調査した上でどのような懲戒処分が相当か等、法的処分に関するアドバイスを行ってきた実績があります。個別具体的事案により、会社がとるべき処分は異なります。

当事務所では、問題社員に対しどのような対応をとるべきか法的に的確なアドバイスが可能です。判断を誤れば、後日処分を争われ、労働審判や訴訟等の紛争に巻き込まれることがあります。

企業の皆様、問題社員に対する対応について判断を迷われる場合には、ぜひ当事務所にお早めにご相談ください。

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