問題社員対応について~ネット上で会社批判をする社員~
ネット上の匿名掲示板やSNS等の普及に伴い、簡単に情報発信できるようになりました。これに伴い、それらへの誹謗中傷の書き込みによるトラブルも増えています。
誹謗中傷などの書き込みをしたのが自社社員であった場合、会社としてどのような法的対応が可能でしょうか。
まずは被害が拡大することを防止する必要があります。ネット上の書き込みの削除を検討しましょう。
方法としては、
発信者に対し削除依頼を行う方法
匿名掲示板等の運営会社に対し送信防止措置依頼(特定電通賠責3①)又は人格権に基づく削除請求(民法723・709)
があります。①は発信者の特定ができないと不可能のため②を検討しましょう。
発信者を特定するためには、
☑匿名掲示板の運営会社又はホスティングプロバイダに対し発信者のIPアドレスおよびタイムスタンプの開示を求める
☑開示されたIPアドレスを管理するインターネットサービスプロバイダに対しIPアドレスとタイムスタンプから契約者情報を求める
ことが考えられます。
このようにして発信者が特定され、それが社員であった場合、会社としてはどのような対応ができるでしょうか。
この場合、まずは社内で懲戒処分を検討すべきです。会社に対する誹謗中傷行為は刑法上の名誉棄損行為に該当する可能性があります。懲戒委員会等を開催し、社員に弁明の機会を与える旨を通知して適正な手続きを取って処分を行っていく必要がありますので、注意が必要です。その中で任意に書き込みを削除するよう求めていく必要もあります。また、SNS上の書き込みであった場合には、SNS自体は社員の私生活上の行為であることが多いため、原則として会社は企業秩序違反行為として懲戒処分ができないという視点も忘れてはなりません。この場合には、会社批判や誹謗中傷行為が会社の名誉や信用を低下させるような場合に初めて企業秩序違反行為として評価できるため、懲戒処分の対象になります。
最高裁判例においても会社を誹謗中傷するビラを就業時間外に会社社宅に配布したことを理由に懲戒処分した事案につき、懲戒処分を課すことが許されるとした裁判例があります(関西電力事件 最判昭59.9.8)。その他、刑事告訴や、民事上の不法行為(民709・710)として損害賠償請求、名誉を回復する措置の要求(民723)なども検討する必要があります。
会社として、社会的信用を棄損ないし低下させるような行為に対しては上記のような法的措置も含め厳しい姿勢で臨むべきですが、書き込みがなされても発信者が特定できない場合にはこれらの措置をとることは難しいといえます。このため、予防のための措置をしておくことも大切でしょう。
予防措置として
☑就業規則上の服務規律に会社の内外を問わず会社または従業員の名誉や信用を棄損する内容の投稿を行ってはならない旨の記載を入れておく、
☑また法的拘束力はありませんが、指針として匿名掲示板等のソーシャルメディアの利用方法についてのガイドラインを定めること
が挙げられます。
昨今の情報社会において誹謗中傷等の書き込みや風評被害にお悩みの企業様も少なくありません。
当事務所では発信者特定から懲戒処分に対する法的アドバイスまで、顧問業務の中で弁護士がトータルでサポートいたします。お気軽にお問合せの上、ご相談ください。