栃木・宇都宮で弁護士をお探しの建設業の方へ
「下請け業者との代金支払いをめぐり、対応に悩んでいる」
「残業代をめぐる労働者とのトラブルが頻繁に発生し、対応に追われている」
「元請けとの契約書の内容が複雑で、自社に不利な条項がないか心配だ」
建設業界において、このようなお悩みは少なくありません。建設業は、建設業法を中心に、独占禁止法、民法、労働関係法令など多岐にわたる法規制の下にあります。このため、元請・下請間の契約、請負代金、工期、安全配慮義務、契約不適合責任など、様々な法律問題が発生します。他の業種にはない特有の法的リスクを抱えています。これら法令につき正確な理解をし、それをもとに適切に対処しなければ、会社の信用を失い、事業継続が困難になる恐れがあります。
法律の専門家である顧問弁護士のサポートを受けることで、トラブルを未然に防ぎ、会社の健全な発展につなげることができます。
建設業の特徴
建設業法において、建設工事の適正な施行、発注者の保護、公共の福祉の増進を目的とし、29業種に区分されており、建設業を営むには許可が必要であり、元請・下請を問わず建設工事に関わる全ての事業者が対象になっています。請負契約の適正化、下請負人保護、書面による契約、一括下請禁止、紛争処理、施工技術の確保、監督処分などが規定されています。
そして、建設業は、他の業種にはない独自の商慣習や構造的な問題を抱えています。これらの特徴が、様々な法的トラブルの原因となることも少なくありません。
多重下請構造
建設業の大きな特徴として専門化・分業化が進み、元請・一次下請・二次下請といった、元請け業者を頂点とする多重下請構造が挙げられます。この構造は、専門性の高い工事を効率的に進める上で合理的である一方で、法的トラブルを複雑化させる要因にもなります。
すなわち、この構造により、施工管理や安全管理が十分に行われないリスク、下位下請への利益のしわ寄せ、社会保険未加入や一人親方化による労働法規制逃れなどの問題が生じやすくなります。
多重下請構造では、元請け業者と下請け業者、さらにその先の孫請け業者との間で、多数の契約関係が発生します。各契約において、代金の支払い時期、工期の遵守、追加工事の費用負担など、様々な条件が定められます。
しかし、口約束や曖昧な書面でのやり取りが多く、契約内容が不明確なまま工事が進むケースも少なくありません。その結果、後になって「言った」「言わない」のトラブルに発展し、代金未払いや追加費用をめぐる紛争に繋がることがあります。
また、元請け業者が倒産した場合、下請け業者が連鎖的に経営危機に陥るリスクも内包しています。
なお、建設業法では一括下請負(丸投げ)が禁止されており、施工体制台帳の見える化などで重層構造の簡素化が求められています。
人手不足
建設業界は、慢性的な人手不足に直面しています。国土交通省の調査によると、建設業の就業者数は高齢化が進んでおり、若年層の入職者が少ない状況です。この人手不足は、労働環境の悪化や過重労働を引き起こし、様々な労働問題に発展する可能性があります。
例えば、人手不足を補うために、従業員に長時間の時間外労働や休日労働を強いるケースが増えています。これは、労働基準法違反のリスクを高めるだけでなく、従業員の健康被害やモチベーション低下にも繋がります。また、発注者や元請が著しく短い工期を設定し、長時間労働や休日取得困難を招くケースが多発しています。これは事故や手抜き工事、技能労働者の賃金低下、若手入職者の減少など、業界全体の持続性に深刻な影響を及ぼしており、2024年からは時間外労働の上限規制も適用されました(建設業には2024年3月31日まで猶予期間がありましたが、2024年4月1日以降は原則として一般企業と同様のルールが適用されます。)これに伴い適正な工期設定が一層重要となっています
また、外国人労働者の雇用が増加する中で、言語や文化の違いから生じるトラブルや、不適切な労働条件での雇用問題も発生しています。
そして、技能承継の困難さが深刻な課題とされています。
今後は、職人の処遇改善や社会保険加入の徹底、建設キャリアアップシステムの普及が推進されています。
労災リスクが高い
建設現場は、高所での作業や重機を扱う作業が多く、他の業種と比較して労災リスクが高いという特徴があります。
労災事故が発生した場合、被災した従業員やその家族への補償問題、安全配慮義務違反をめぐる会社への損害賠償請求など、様々な法的問題が発生します。
また、労災事故の対応を誤ると、会社の安全管理体制が不十分であるとみなされ、行政指導や刑事罰の対象となったり、企業の社会的信用を大きく損なったりする可能性もあります。
建設業界におけるよくある法律トラブル
建設業界では、そのビジネスモデルや慣習から、様々な法律トラブルが頻繁に発生します。これらのトラブルは、会社の経営に深刻な影響を与える可能性があります。ここでは、建設業界で特によく見られる法的トラブルとその具体的な内容について解説します。
労働問題
建設業界の労働問題は、多岐にわたりますが、最も多いのが、未払い残業代をめぐるトラブルです。長時間労働が常態化しやすい建設現場では、正確な労働時間の管理ができていないために、従業員から未払い残業代を請求されるケースが頻繁に発生します。労働基準法に則った賃金計算ができていないと、多額の未払い残業代を支払うことになり、会社の経営を圧迫します。
次に、解雇や雇い止めに関するトラブルです。特に、プロジェクト単位で雇用する非正規雇用者との間で、契約更新をめぐって紛争が発生することがあります。解雇や雇い止めには、法律上の要件を満たす必要があり、これを怠ると不当解雇として訴訟に発展するリスクがあります。
また、前述した労災事故に関連して、安全配慮義務違反をめぐる損害賠償請求も増加傾向にあります。会社が従業員の安全を守るための十分な措置を講じていなかった場合、多額の損害賠償を命じられる可能性があります。
なお、元請会社が下請会社の労働者に対して実質的に支配を及ぼしている場合、安全配慮義務を負うことがあります。労働災害や事故が発生した場合には、元請・下請・派遣元など関係各社の安全配慮義務違反が問われることがありますので注意が必要でしょう。
さらに、ハラスメント(セクハラ・パワハラ)をめぐる問題も深刻なリスクとなり得ます。建設現場のような閉鎖的な環境では、ハラスメントが発生しやすく、従業員からの訴えや損害賠償請求に発展することがあります。
これらの労働問題は、会社の社会的信用を大きく損なうだけでなく、訴訟リスクや多額の支払いリスクを伴います。
近隣住民とのトラブル
工事現場では、近隣住民とのトラブルがつきものです。
騒音や振動、粉塵、日照阻害など、工事に伴う様々な問題が住民の生活に影響を与え、苦情や損害賠償請求に発展するケースがあります。特に、都市部の密集した住宅街での工事では、トラブルが起こりやすくなります。住民から工事の中止を求められたり、工事車両の通行をめぐって紛争が発生したりすることもあります。
こうしたトラブルは、工事の遅延や追加費用の発生を招き、会社の経営に大きな打撃を与えます。近隣住民とのトラブルを未然に防ぐためには、工事計画段階で十分な説明を行い、住民の理解を得ることが重要です。
元請・下請間のトラブル
建設工事の下請契約には下請法は適用されず、建設業法と独占禁止法が適用されます。元請負人には以下の義務があります。
・不当に低い請負代金の禁止(建設業法19条の3)
・不当な資材購入強制の禁止(19条の4)
・下請代金の早期支払義務(24条の3)
・割引困難手形の交付禁止(24条の5)
違反が独占禁止法の不公正な取引方法に該当する場合、公正取引委員会による排除措置命令や損害賠償請求が可能です。
建設業の根幹をなす元請けと下請け間のトラブルにおいて、多いのが、代金の未払いや支払い遅延です。元請け業者が下請け業者への支払いを遅延させたり、不当に代金を減額したりするケースは少なくありません。
また、追加工事や設計変更をめぐるトラブルも頻繁に発生します。
工事中に発生した追加工事の費用負担について、元請けと下請けの間で意見が対立し、紛争に発展することがあります。
そして、建設工事の請負契約は、対等な立場での合意、公正な契約、信義誠実の履行が原則です。工事内容、請負代金、工期など重要事項を記載した書面による契約が義務付けられています。工期や請負代金の変更が必要な場合、協議の上で変更契約を締結しなければなりません。片務的な契約や、下請負人に一方的な負担を課す契約は不適切とされます。
契約書に明確な定めがない場合、口頭での約束が争点となり、解決が困難になるケースもあります。これらのトラブルは、下請け業者の資金繰りを悪化させ、経営に深刻な影響を与えます。
施主とのトラブル
工事の最終的な発注者である施主(顧客)とのトラブルも、建設業にとって大きなリスクです。
特に多いのが、工事の遅延や契約不適合責任(瑕疵担保責任)をめぐるトラブルです。
施主は、契約で定められた工期内に工事が完了することを期待していますが、様々な理由で工事が遅れることがあります。この場合、施主から遅延損害金を請求される可能性があります。
また、工事完了後に、建物の欠陥(瑕疵)が発見された場合、施主は会社に対して修補請求や損害賠償請求を行うことができます。瑕疵の範囲や責任の所在をめぐって、紛争に発展することも少なくありません。
これらの施主とのトラブルは、会社の評判や信用を大きく損なうだけでなく、多額の賠償金を支払うリスクを伴います。
なお、建築基準法違反がある場合でも、直ちに請負契約が無効となるわけではありませんが、悪質な違法行為があれば公序良俗違反として無効となる場合があります。
顧問弁護士ができること
以上のように、建設業は様々な法的リスクを抱えています。
これらのリスクに適切に対処し、会社の健全な経営を維持するためには、法律の専門家である顧問弁護士のサポートが不可欠です。
ここでは、建設業の顧問弁護士が具体的にどのようなサポートを提供できるのかについて詳しく解説します。
契約書の作成・レビュー
建設業の事業活動は、元請け・下請け間の契約、施主との請負契約、資材購入契約、協力会社との契約など、多数の契約によって成り立っていますが、これらの契約書に不備があると、後々のトラブルの原因となります。
顧問弁護士は、契約書の作成・レビューを通じて、法的リスクを未然に防ぐことができます。具体的には、会社の事業内容や取引の実態に合わせて、トラブルを予測した上で、将来のリスクを回避するための契約書を作成します。例えば、工事の遅延や追加工事の費用負担について、明確な条項を盛り込むことで、紛争の発生を予防します。
また、取引先から提示された契約書についても、会社の利益を不当に損なうような条項がないか、専門的な観点からレビューし、必要に応じて修正案を提案します。
これにより、会社は安心して取引を進めることができます。
労務問題への対応
建設業の顧問弁護士は、労務問題への対応においても重要な役割を果たします。
労働基準法は頻繁に改正されるため、最新の法律に準拠した社内体制を構築する必要があります。顧問弁護士は、会社の就業規則や賃金規程が法律に適合しているか確認し、必要に応じて改訂をサポートします。
また、未払い残業代や不当解雇など、従業員との間でトラブルが発生した場合、会社の代理人として交渉や訴訟に対応します。これにより、会社の法的リスクを最小限に抑え、円滑な問題解決を目指します。
さらに、ハラスメント防止のための社内規程の整備や、外国人労働者の適正な雇用契約の作成についてもアドバイスを提供します。
顧問弁護士に依頼することで、会社は労働関連法規の遵守を徹底し、健全な労働環境を構築することができます。
トラブル発生時の交渉・訴訟代理
建設業の顧問弁護士は、トラブルが実際に発生した場合、会社の交渉・訴訟代理を務めます。
トラブルが発生した際、当事者同士で話し合っても解決に至らないケースは少なくありません。また、法的知識がないまま交渉に臨むと、会社にとって不利な合意をしてしまうリスクがあります。顧問弁護士は、トラブルの内容を正確に分析し、法的な根拠に基づいた交渉を行うことができます。元請け業者との代金回収交渉、下請け業者からの不当な請求への対応、近隣住民との損害賠償交渉など、様々なトラブルに対応が可能です。
また、交渉で解決しない場合は、裁判所での訴訟手続きを代理し、会社の権利を法的に守ることができます。
弁護士が介入することで、相手方との関係が感情的になるのを防ぎ、冷静かつ論理的な解決を目指すことができます。
コンプライアンス体制の構築
建設業は、建設業法や下請法など、多くの法律や規制に縛られています。これらの法令を遵守することは、会社の社会的信用を維持し、事業を継続する上で不可欠です。顧問弁護士は、これらを踏まえて会社のコンプライアンス体制の構築をサポートします。
具体的には、会社の業務内容をヒアリングし、どのような法的リスクが潜んでいるかを洗い出し、その上で、違法行為を未然に防ぐための社内規程の作成や、従業員向けの法務研修を実施します。また、行政指導や立入検査への対応についてもアドバイスを行うことが可能です。
技術者設置義務・許認可の法令遵守も求められ、専任技術者の設置義務や資格要件の不正取得、不設置による許可取消し事案が発生しています。下請業者が必要な建設業許可を取得していない場合、元請も営業停止処分を受けるリスクがあり、許認可の確認が重要です。
そして、建設現場は多くの企業が関与し、現場ごとにコンプライアンス体制の統一や遵守状況の把握が困難になりやすいという特質を有しています。このため、データ偽装や手抜き工事、アスベスト被害など、品質・安全管理の不徹底が社会問題化しています。技術者の役割や施工能力の重要性が強調されており、適切な技術者配置と管理が求められます。
顧問弁護士に相談し、専門的なサポートを受けることで、会社は法令遵守を徹底し、健全な企業活動を行うことができます。
建設業の経営者で、顧問弁護士をお探しなら宇都宮東法律事務所まで
建設業は、多重下請構造、人手不足、労災リスクの高さなど、特有の法的リスクを抱えています。今後さらに、業界として法令遵守や業界全体の構造改革、働き方改革など多角的な対応が求められています。これらのリスクに適切に対処できなければ、会社の経営に深刻な影響を与える可能性があります。
宇都宮東法律事務所は、建設業分野の法律問題に精通した弁護士が在籍しております。契約書の作成・レビューから、労働問題、元請け・下請け間のトラブル、施主との紛争まで、建設業の皆様が直面するあらゆる法的問題に対し、的確かつ迅速なサポートを提供いたします。建設業界の経営者の方は、是非一度お問い合わせください。