ヘルスケア商品の広告表現サポート

健康意識の高まりを背景として、ヘルスケア分野は今後の成長が大いに期待できる市場となっています。
しかし、ヘルスケア分野は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)、景品表示法(景表法)、健康増進法、食品衛生法など、種々の専門的な法規制が多数存在するため、入念な法令調査や各種ガイドラインの調査が必要不可欠です。
今回は、ヘルスケア分野の法規制のうち、問題となることの多い薬機法の広告規制についてお話していきます。

1.薬機法の広告規制

薬機法の広告規制は、第66条~第68条に定められています。
虚偽・誇大広告の禁止(同法66条1項)、医師等が保証したと誤解されるおそれのある記事の広告の禁止(同法66条2項)、堕胎を暗示し又はわいせつにわたる文書又は図画の使用禁止(同法66条3項)、特定疾病用の広告制限(同法67条)、未承認医薬品等の広告禁止(同法68条)です。
また、薬機法の規制対象は、「何人も」と定められていることから、医薬品等の販売業者だけではなく、広告を行った新聞社や雑誌社等にも適用されます。

2.広告とは

そもそも「広告」とは、どのようなものを指すのでしょうか。この点については、「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」(平成10年9月29日付け医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)により、以下の3要件をすべて満たすものが「広告」に該当するとされています。

①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
③一般人が認知できる状態であること

具体的には、製品の容器、包装、添付文書などの表示物や、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなどによる広告、使用経験者の感謝文、体験談集などが規制の対象となります。

3.広告規制の違反例

前述のとおり、薬機法は未承認医薬品等の広告禁止を定めています。そのため、医薬品等として承認等を取得していないヘルスケア商品について、たとえば「ガンが治る」「アトピーに効く」「抗ウイルス」など、医薬品的な効能効果を標榜する広告表現は禁止されています。
また、承認等を得たヘルスケア商品であっても、虚偽広告や誇大広告は禁止されています。たとえば、効能効果、性能、安全性等について、承認を受けた効能効果等の範囲を超えた表現をすることや、適応外の広告は禁止されています。
より具体的には、厚生労働省が出している「医薬品等適正広告基準」や、同基準の解説である「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項について」に詳しく記載されています。「医薬品等適正広告基準」について簡単に触れておくと、広告に用いることができる「名称」、「製造方法」、「効能効果、性能及び安全性」などについて、具体的な基準が示されており、広告を出す際には、これらの基準に適合しているか、確認する作業が必要となります。

4.違反した場合の罰則

薬機法の広告規制に違反した場合、行政指導や、中止命令・許認可の取消し等の行政処分を受ける可能性があるほか、懲役刑や罰金刑などの刑罰が科される可能性まであります。
また、令和元年に薬機法が改正されたことにより、令和3年8月1日からは、虚偽・誇大広告規制に違反する行為について、課徴金納付命令の対象とされたため、違反者には高額の課徴金が課される可能性もあります。

5.事前に専門家に相談することが重要です

これまで見てきたように、ヘルスケア商品に関する広告規制は非常に多岐にわたり、その内容も複雑です。また、広告規制に違反した場合、行政処分や刑罰を受ける可能性があり、その不利益は深刻なものとなります。
今まで大丈夫だったから今後も大丈夫だろうなどと甘く考えず、些細なことであっても、事前に専門家に確認してもらうことがとても重要です。当事務所では、ヘルスケア商品の広告規制について、これまで多数のご相談をいただいております。ご不安な方は、是非一度ご相談にいらしてください。

監修者:弁護士 伊藤一星(弁護士法人宇都宮東法律事務所 代表弁護士)
所属/日本弁護士連合会、栃木県弁護士会
資格/弁護士

「誰でも気軽にリーガルサービスの提供を受けられる社会」を実現し、地域社会に貢献できる法律事務所を目指して弁護士法人宇都宮東法律事務所を設立。
主な取り扱い分野は交通事故・企業法務・労災・離婚など多岐に渡る。
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