求人広告詐欺の典型的な手口とは?企業が知っておきたいトラブル時の対応方法を解説
近年、人手不足に悩む中小企業をターゲットにした求人広告詐欺が増加しています。手口が巧妙なために気づかず広告掲載契約をしてしまう企業が多く、詐欺を避けるためには、詐欺業者を見極めるポイントや被害に遭った場合の対処に関する理解が欠かせません。
そこで本記事では、企業経営者様、広告担当者様向けに、求人広告詐欺の典型的な手口や悪徳業者の見分け方、詐欺に遭った際の対応方法について解説します。
求人広告詐欺とは
求人広告詐欺とは、ハローワークなどで求人募集をしている企業などをターゲットにした、高額広告料を得るための詐欺手口のことを指します。近年、労働力の減少にともない人手不足が加速し、求人競争に悩む中小企業が増加傾向にあります。そうした企業の弱みに付け込み、求人広告の無料掲載をネタに勧誘し、無料掲載の後に高額の有料契約へ自動移行させるという悪徳な手法による被害が増加しています。こうした詐欺は巧妙かつ悪質な手口を使用するため、普通の求人広告営業との見分けがつきにくいことがほとんどです。こういった典型的な手口を理解し、詐欺を疑えるように準備しておくことが重要です。
求人広告詐欺の典型的な手口
「無料」を強調した勧誘
求人広告詐欺では、勧誘の際に「無料」であることが強調されることがほとんどです。「無料」でなんでもできると勘違いさせることで、人手不足に悩む中小企業を騙そうとしている場合が多いです。求人広告詐欺の勧誘は、電話やFAXで飛び込み営業をしてくることが多いため、以下のような文言で「無料」を強調していないか注意しましょう。
- お金をかけずに求人できる
- 有料になる前に解約すればいい
- 無料掲載は今だけのキャンペーン
- 新しいサイトだからモニターをしてほしい
このような宣伝は詐欺ではない通常ビジネスでも行われるため、疑うことはないかもしれません。しかし、高額な掲載料を請求されてからこれらの発言が嘘であったことに気づいても遅いです。「無料」を強調した勧誘の場合、詐欺の可能性を考えることが重要です。
解約に応じない
求人広告詐欺の場合、無料掲載期間の終了前に解約をしようとしても、解約手続きに応じてくれないことが多いです。詐欺業者は、無料期間終了までのキャンセルを阻止するために、以下のような手口を駆使してきます。
- 解約用の電話番号に何回かけても通話中でつながらない
- 解約書面が期間満了日までに送られてこない
- 解約方法がとても難しいルールで指定されている
軽い気持ちで求人広告掲載の契約をしてしまうと、すでに逃れられない状況になっていることがほとんどであるため、契約が成立してから詐欺であることに気づいてもすでに遅いということになります。そのため、契約しようとしている相手が詐欺業者なのかどうかは事前に見極める必要があります。
虚偽表記や分かりずらい表示
具体的な契約内容は申込書や契約書に記載されますが、求人広告詐欺の場合、虚偽の文言が含まれていたり、誤解を生じやすくわかりづらい表記がされていたりすることが多いです。たとえば、下記のような重要な説明が申込書や契約書の裏に小さく書かれていることがあります。
- ◯日前に所定の書式で申込しなければ解約できない
- 申し出をしなければ自動的に更新される
- 期間中は中途解約できない
このような記載は、本来は契約時にわかりやすく説明したり目立つ文字で契約書に記載したりする必要があります。しかし、重要な事項をわざと見落とし、誤解するように表記することが詐欺業者の典型的な手口の一つです。
無断で勝手に更新される
求人広告詐欺の典型的な流れとして、無料掲載期間中の解約期間を過ぎたのちに、無断で勝手に更新されて有料契約に移行する場合が挙げられます。こういった場合の多くは、有料契約に自動移行することは契約書にわかりづらく表記されていて、気づかないように工夫されています。勝手に更新されたことを後から詐欺業者に問い合わせても、自動更新に関する説明は契約書でしっかり記載していることを主張されるでしょう。解約通知も他の営業DMにまぎれやすいように送られてくるなど、更新期間まで気づけないような巧妙な手口が使われることがほとんどです。
業者との連絡が取りづらい
契約の申込後は業者との連絡が突然取りづらくなることも求人広告詐欺の典型的な例の一つです。無料期間の満了が近くなり広告業者と連絡を取ろうとしても、電話がつながらない、返信がこないなど極端に連絡が取れなくなります。そして、解約等の申し出や相談ができないまま無料期間が終了し、高額な広告料を請求されることがほとんどです。
悪徳業者の見分け方
相手の情報をネットで検索してみる
求人広告詐欺を疑う勧誘があった場合、まずは相手業者の情報をネットで検索してみましょう。業者の名前をネットで調べ、他に被害報告が見受けられたり、「詐欺」「悪徳」といったワードが関連して出てきたりする場合は、詐欺業者であることを疑う必要があります。また、相手業者の求人サイトが検索上位に出てこない場合や、住所検索をするとバーチャルオフィスや複数業者が同居する事業所が出てくる場合も詐欺の可能性が高いといえます。
申し込み書・契約書をくまなく確認する
詐欺に引っかかることを確実に避けるためには、申込書や契約書を徹底的に確認する作業が欠かせません。求人広告詐欺は、有料契約への更新や解約方法などの重要事項をわかりづらく表記していることが特徴であるため、契約条件の確認時は表記方法にも注意しながらチェックしましょう。そして、サービスの利用を申し込むときは、利用者側からの中途解約の禁止や高額の違約金条項など、利用者側に不利な条項が含まれていないか、事前に確認しましょう。営業の電話がかかってきたときは、担当者の説明を鵜呑みにせず、申し込む前に利用規約の内容をよく読み、後日利用料を請求される可能性があるか、取引条件をしっかりと確認しましょう。
申込書や契約書をよく確認せずに契約をしてしまった場合は、こちら側にも過失があると主張されてしまう可能性もあるため、契約書をしっかり確認する作業は非常に重要です。
担当者とのやり取りや勧誘の内容を、メールや文書、会話の録音など記録の形で残しておくと、後々争いが生じたときの証拠になります。
無料求人広告のトラブル・被害にあった場合の対応
請求に応じない
業者から高額な広告掲載料を請求された場合、納得できない事情があるならば支払いをしてしまわないように注意しましょう。契約時の手口に法的な問題がある場合、民法の詐欺規定に基づく契約の取り消しや公序良俗に違反するとして、契約の無効を主張できる可能性があるからです。ただし、請求を放置してしまうと、支払いの遅延損害金などによって請求額が膨らみ、業者から訴訟を起こされることもあるため、注意が必要です。
広告料の支払義務がないことを書面で通知する
相手業者への反論として、まずは契約が成立していないことを主張して、広告料の支払義務はないと通知しましょう。相手方は、わかりづらい表記であっても契約書に必要な事項は記載していることを理由に反論をしてくる可能性が高いです。しかし、契約書の記載方法があまりに非常識で不公正な方法である場合、契約の無効を主張できることがあります。そのため、相手方への反論主張をする場合は、内容証明郵便を用いて正式な書面で証拠を残すことも意識するようにしましょう。
詐欺・錯誤を理由に契約を取り消してもらう
契約の有効性が認められる場合であっても、騙された上で同意した契約や、重要な部分の認識を誤ったまま同意した契約は、民法95条と96条に定められるルールに基づいて後から取り消すことが可能な場合があります。つまり、求人広告業者の勧誘で、虚偽の表示があった場合や誤解を誘う不適切な表示があった場合は、求人広告掲載の契約を取り消すことができるということになります。このように契約成立後であっても反論の余地はあるため、焦って支払いをせずに、法的な主張を検討することが重要です。
無料求人広告詐欺を弁護士に相談するメリット
状況に合わせて迅速に対処できる
無料求人広告詐欺の対応は、迅速に進めることが求められます。無料期間が終わる前に解約をする、請求に対して法的な反論をするといった場合、スピード感のある判断が欠かせません。紛争トラブルの専門家である弁護士に対応を依頼すれば、状況に応じた対処を迅速に進めることが可能です。
裁判になった場合でも適切に対応できる
請求金額が高額になれば、詐欺業者側からも支払いを求める訴訟を起こしてくることがあります。裁判では、有効な証拠を準備した上で法的な根拠に基づく主張をすることが求められます。弁護士に相談をしておくことで、裁判になっても相手方の請求に対して的確な反論を行うことが可能です。
精神的な負担の軽減
弁護士に詐欺対応を一任することで、精神的な負担が軽減されることは大きなメリットの一つです。詐欺に遭ったことでただでさえ心穏やかではいられない中、反論を検討したり書類を準備したりすることは多大な労力を使うでしょう。弁護士に依頼をすれば基本的な手続きは任せることができるため、自社だけで対応するよりも安心感が増します。
まとめ
求人広告詐欺では、「無料」であることを強調した勧誘をし、気づかないうちに有料契約に自動移行して広告料を請求してくる手口が使われます。
事業者同士の契約の場合、契約書や契約約款(利用規約など)における契約条項の中に、
勧誘された側の事業者に著しく不利な条項があっても、原則としてその契約は有効で、一方的に破棄することはできません。
また、解約や更新に関する重要事項は認識しづらいように工夫がされており、詐欺に気づいて解約をしようとしても手遅れであることがほとんどです。
求人広告詐欺を避けるためには、契約前に契約条件を徹底的に精査することや、詐欺発覚後に法的な主張で反論することが重要で、難しいケースもあります。
対応には迅速かつ適切な判断が求められるため、求人広告詐欺に対処する際は弁護士に専門的なアドバイスを受けることを推奨いたします。弊所では、契約トラブルの実績が豊富な弁護士が、契約前の相談から訴訟手続きまで徹底サポートいたします。求人広告詐欺でお悩みの場合は、ぜひご相談ください。