遅刻を繰り返す社員への対応の流れと対処時に知っておくべき注意点を解説
職場内に遅刻を繰り返す社員がいる場合、周りの人の業務に迷惑をかける上に、放置すれば社内の規律が乱れる事態にもなりかねません。トラブルを避けながらも、遅刻社員に対してなんとか効果的な対処をしたいと悩む人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、遅刻を繰り返す社員への対処の流れと行ってはならない対応について解説いたします。
遅刻を繰り返す社員の対応前に知っておくべきこと
遅刻行為は懲戒処分の対象になる
遅刻や無断欠勤を繰り返す行為は、労働者の義務を怠っているため懲戒処分の対象になります。労働者は、定められた業務時間に過不足なく労働する義務を、雇用契約により負っており、遅刻行為はこの雇用契約上の義務に違反するため、処分の対象と判断されるからです。遅刻を繰り返す人は、社内の秩序を乱したり、他従業員の業務に悪影響を及ぼすこともあるため、問題社員として懲戒処分が検討されることもあるでしょう。
突然処分を行うことは避ける
遅刻行為は懲戒処分の対象になりますが、遅刻を数回したことを理由に、突然処分することはできません。遅刻を理由に処分するためには、まず適切な注意や指導を行うことが重要です。そして改善を促す期間を設け、改善が見られない場合は懲戒処分に進むというように、段階を踏まなければなりません。
もし、十分な対応をしていないまま解雇などに踏み切ってしまうと、解雇権乱用を訴えられる事態につながりかねません。また、他の遅刻常習者と比べて不公平な処分をしてしまった場合も、処分対象者の反発でトラブルに発展する可能性は高いです。
したがって、遅刻を繰り返す社員に何らかの処分を検討する場合は、着実な対応をすることが重要です。
遅刻を繰り返す社員の適切な対処の流れ
遅刻の原因を把握する
遅刻を繰り返す社員に責任を追及する場合、まずはその原因を確認しなければなりません。遅刻の原因には、本人に問題があるケースとそうでないケースが考えられます。例えば、本人が体調不良である場合や家族が病気である場合など、やむを得ない事情による遅刻である場合があります。このような事情の場合は、残業をさせないようにしたり、休職を命じたりするなどの対処を検討しなければなりません。また、上司からのパワハラや職場内でのいじめが原因で勤怠不良が続いている可能性もあります。社内調査を行って職場環境を整えるなどの対処を講じる必要性も視野に入れておく必要があります。
上記のような原因に当てはまらず、当該社員の意欲・規範意識の低さなどが主な原因の場合、改善を求めて次のような手順で対応を進めます。
注意・指導を行う
社員本人に改善を促すべき遅刻の理由がある場合、注意・指導を行います。この段階で重要なことは、口頭だけでなく書面で改善を求める業務指示を行うことです。書面で注意・指導の過程を記すことで、後に裁判などの法的トラブルに発展した際に、会社は適切な対処をしたという客観的な証拠を残せます。
問題社員への注意・指導は以下のような流れで行います。
・業務報告を書かせる
・指導記録票を作成する
・面談を行う
・注意書・指導書を交付する
注意書などに署名欄を作ったり定期的な面談を行ったりすることで、社員本人も注意・指導が行われていることを自覚していたという証拠を残すことが大切です。また、注意・指導の指示を行う際に、改善が見込まれない場合は懲戒処分となる可能性があることを明示しておくと効果的でしょう。
軽微な処分を下す
注意・指導を行ったが改善が見られない場合でも、いきなり辞めさせようとせず、配置転換や軽微な懲戒処分を行うことをおすすめします。軽微な処分で様子を見ることで、改善を促す十分な期間を設けていると証明することにつながるからです。遅刻が原因で業務に支障をきたしている場合は、人事権を行使して配置転換や降格を命じることができます。
軽微な懲戒処分には以下のようなものがあります。
・戒告
・譴責
・減給
・出勤停止
・降格
実際に処分が下されることで、遅刻行為に対する意識が改善されるかもしれません。
退職勧奨をする
遅刻社員を辞めさせようと検討する段階になっても、解雇に進む前に退職勧奨を行います。退職勧奨とは、会社から従業員に退職を促し、従業員側から退職届を提出してもらう方法です。同意の上で退職届を出す形となるため、訴訟に発展しにくい点が魅力といえます。訴訟に発展すると会社に少なからず負担が生まれるため、会社側の費用や労力の負担をできるだけ減らせるように、訴訟を極力避ける方針を選択することが重要です。
解雇に進む前に、本人の同意を得て自ら退職してもらうことを目指しましょう。
懲戒解雇を行う
遅刻を繰り返す社員への対処の最終手段は、懲戒解雇を行うことです。注意・指導をきっちり行っていれば、訴訟に発展しても解雇の正当性を立証できます。会社が適切な対応を行ったという証拠として、以下の資料が重要です。
・責任者がチェックを入れた業務報告書
・指導記録票
・面談内容のメモ
・本人がまとめた改善点の報告書
・注意書や指導書
解雇はトラブルに発展しやすく、訴訟になると会社の負担を増やしてしまうリスクがあるものです。段階を踏んで改善を促しても効果がなく、やむを得ないと判断した場合に、会社の正当性を立証する準備を万端にして解雇に踏み切りましょう。
遅刻を繰り返す社員に行ってはならない対応
何も対応しない・放置する
遅刻を繰り返す社員がいるにもかかわらず会社側が何も対応しなければ、真面目に出社している社員からは不満が発生したり、社内の規律が乱れる事態にもなりかねません。また、遅刻社員に注意や指導を行わなければ、何も言われないからとさらに遅刻行為がエスカレートする可能性もあります。遅刻が多く勤務態度に問題がある社員がいる場合は、迅速に対応することが重要です。
無闇に叱責する
遅刻の理由を十分に聞かずにむやみに叱責する行為は、パワハラと訴えられる可能性があります。例え、遅刻を重ねる従業員の態度が悪かったとしても、面談時や指導時に暴言や叱責をしないように注意をし、冷静に対応することが重要です。社員が面談・指導時の様子を録音している可能性も考えられるため、常に冷静に指導を進めることを意識する必要があります。
遅刻を繰り返す問題社員の対応でお困りなら宇都宮東法律事務所まで
遅刻を繰り返す行為は立派な懲戒処分の対象行為ですが、いきなり処分を下したり無闇に叱責したりするとトラブルの原因になりかねません。遅刻を頻発する社員がいる場合は、まずは原因の確認を行い、本人に責任があるならば、改善を促す注意や指導、懲戒処分と段階を踏んで進めることが重要です。
遅刻を繰り返す社員への対応では、手順を誤ればパワハラや不当解雇などを訴えられる可能性が高いため、弁護士に客観的かつ専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
宇都宮東法律事務所では、企業人事に関する経験と実績が豊富な弁護士が、ベストな解決に向けた助言を行います。訴訟トラブルに発展した際のサポートも万全に行いますので、遅刻社員への対応に悩んだ際はぜひお気軽にご相談ください。