栃木・宇都宮で弁護士をお探しの運送業の方へ

運送業は、私たちの生活と経済を支える重要な社会インフラですが、その経営には「労務管理」、「交通事故」、「複雑な取引関係」といった、専門的な法律知識を必要とする多くの課題が伴います。

「ドライバーの残業代請求にどう対応すればいいだろうか」
「万が一、従業員が重大な交通事故を起こしたら…」
「荷主との契約で不利な条件を提示されている」

といったお悩みをお持ちの経営者の方は多いのではないでしょうか。法律の専門家である顧問弁護士のサポートを受けることで、トラブルを未然に防ぎ、会社の健全な発展につなげることができます。

運送業の特徴

運送業界には、特有の構造や課題があります。ここでは、運送業における主な4つの特徴について、弁護士の視点から解説します。

労働集約型産業と労務管理の難しさ

運送業は他産業と比べて労働条件が厳しく、長時間労働や賃金水準の低さ、労働時間管理の難しさなど、さまざまな労務問題を抱えています。運送業は、多くのドライバーの労働力によって支えられる労働集約型の産業です。そのため、労務管理が経営の根幹を揺るがす重要な要素となります。ドライバーの勤務形態は、長時間労働になりがちであり、休憩時間の確保や残業代の計算が複雑化しやすい傾向があります。

このため、デジタルタコグラフや日報などの客観的記録を活用し、労働時間や休憩時間の実態を証拠として管理・立証することが重要です。

また、日給制、固定残業代、歩合給など多様な賃金制度が存在しますが、制度の運用が不明確・不適切な場合、未払い残業代請求のリスクが高まるため、賃金規程や雇用契約書で制度内容を明確にし、正しく運用する必要があります。

交通事故のリスク

運送業の事業活動において、交通事故のリスクを完全になくすことはできません。ひとたび重大な交通事故が発生すれば、被害者への損害賠償はもちろんのこと、会社の信用失墜、行政処分(車両の使用停止など)、保険料の増大といった、経営に深刻なダメージを与える多岐にわたる問題が生じます。事故後の対応では、被害者や保険会社との示談交渉、過失割合の認定、従業員であるドライバーへの求償など、複雑な法的判断が求められます。

多重下請構造と複雑な取引関係

運送業界は、荷主を頂点として、元請け、下請け、孫請けといった多重下請構造が一般的です。前提として貨物自動車運送事業や利用運送事業には、国土交通大臣の許可や登録が必要です。無許可事業者(いわゆる白ナンバートラック)への委託は違法であり、荷主にも法令遵守が求められます。労働安全衛生法によるフォークリフト点検義務や、運転者の安全・休憩環境確保など、労働安全・運送効率化の観点からも多くの規制があります。

この構造は、効率的な物流網を形成する一方で、契約関係の複雑化を招きます。

例えば、「運送委託契約書」が十分に整備されていないために、荷物の破損や遅延が生じた際の責任の所在が曖昧になり、元請け会社と下請け会社の間で紛争に発展することがあります。また、優越的な地位にある荷主や元請けから、一方的な運賃の減額や不当な要求を受けるといったトラブルも散見されます。

「2024年問題」による経営環境の変化

2024年4月1日から、運送業(特にトラックドライバー等の自動車運転者)に対して、働き方改革関連法による労働時間規制の猶予期間が終了し、厳格な時間外労働の上限規制が適用されることになりました。これにより、ドライバーの労働時間が減少し、物流業界全体に大きな影響が及ぶとされています。

自動車運転者の時間外労働は、原則として月45時間・年360時間が上限となり、臨時的な特別の事情があっても年960時間が上限となります。改善基準告示の改正により、拘束時間・休息期間・運転時間・時間外労働や休日労働の基準が厳格化されます(具体的には、原則として月の拘束時間は284時間以内、年間の総拘束時間は3,300時間以内とされます。)

この規制は、ドライバーの労働環境改善という側面がある一方、運送会社にとっては「ドライバー1人あたりの走行距離の減少による売上の低下」や、「残業代の減少によるドライバーの離職」といった深刻な経営問題に直結します。この変化に対応するためには、労働時間の適正な管理はもちろん、荷主との運賃交渉や、就業規則の見直しが不可欠です。

運送業界におけるよくある法律トラブル

運送業の経営者は、日々さまざまな法律トラブルに直面する可能性があります。これらのトラブルは、初動対応を誤ると問題が深刻化し、経営に大きな影響を及ぼしかねません。

労務に関するトラブル

運送業において最も多い法律トラブルの一つが、労務に関する問題です。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

未払い残業代請求

「基本給に固定残業代が含まれていると説明したが、退職したドライバーから未払い分の残業代を請求された」、「歩合給の計算方法が不適切だと指摘された」など、残業代を巡るトラブルは後を絶ちません。労働審判や訴訟に発展し、数百万円単位の支払いを命じられる事例もあります。

労働災害

荷物の積み下ろし中の事故など業務に起因する死傷病は労働災害にあたります。会社としての安全配慮義務違反が問われ、従業員やその遺族から損害賠償を請求される可能性があります。

また、運送会社は、ドライバーの健康状態や労働時間・休日取得状況を把握し、過重労働を防止する安全配慮義務を負っています。長時間労働や休息不足が原因で健康被害が生じた場合、会社は損害賠償責任を問われることがあります。特に、慢性的な疲労や休息の確保が困難な状況を放置した場合、安全配慮義務違反とされるリスクが高いです。

解雇・雇止めに関する紛争

勤務態度や能力を理由に従業員を解雇したところ、「不当解雇だ」として労働組合を通じて団体交渉を申し込まれたり、訴訟を提起されたりすることがあります。

交通事故に関するトラブル

交通事故は、運送業の経営を根底から揺るがしかねない重大なリスクです。交通事故に関連する典型的なトラブルには、以下のようなものがあります。

損害賠償交渉

事故の相手方や保険会社との損害賠償交渉は、専門的な知識がなければ不利な条件で示談してしまう恐れがあります。特に、死亡事故や重度の後遺障害が残る事故では、賠償額が高額になり、交渉が難航しがちです。

使用者責任の追及

従業員であるドライバーが起こした人身事故について、会社は民法上の「使用者責任」を問われ、被害者に対して損害賠償責任を負います。会社として適切な労務管理や安全教育を行っていたかが争点となります。

取引・契約に関するトラブル

運送業の事業活動は、荷主や協力会社との契約に基づいて成り立っています。まず、運送人の権利・義務と責任について確認しておきましょう。原則として運送人は運賃請求権、運送品に対する留置権、運輸の先取特権などの権利を有します。その義務としては、運送品の受取・保管・運送・引渡しに関する注意義務、積込・荷降ろし義務などがあり、各段階での義務違反が問題となります。荷受人が受取を拒否した場合や所在不明の場合には、供託や競売による処理が認められています。

これに伴う運送人の債務不履行や不法行為責任、損害賠償責任の範囲、責任制限約款の効力なども重要な論点になることが多いです。これに加え、運送業における契約関係は適用法令の多層構造が特色として挙げられます。商法は陸上運送、海上運送、航空運送に分けて規律しており、各運送形態ごとに特別法や国際条約が適用される場合があります。

実務上は、標準貨物自動車運送約款や標準宅配便運送約款など、運送事業者が作成する約款が契約内容を大きく規定し、商法の任意規定より優先されることが多いです。約款の有効性は民法や消費者契約法の制約を受け、商法上も一定の特約禁止規定があります。

このため、契約内容が曖昧であったり、不利な条項が含まれていたりすると、約款の有効性が争われるリスクが高まるとともに、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。

運送料金の未払い・減額

契約書で支払条件が明確に定められていない場合、荷主や元請けから一方的に支払いを遅延されたり、不当な理由で運賃を減額されたりすることがあります。

貨物事故の責任問題

輸送中に荷物が破損・汚損した場合の責任の所在や賠償範囲を巡るトラブルです。運送品の滅失・損傷・延着に関する損害賠償責任や、その範囲・上限を定める特約の有効性が争点となることが多いです。運送約款や契約書の規定が重要となります。

下請法違反

運送業において下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用されるかどうかは、取引の内容(役務提供委託に該当するか)と取引当事者の資本金規模によって判断されます。下請法は、下請事業者の利益保護と取引の公正化を目的とし、親事業者に対して一定の義務や禁止行為を定めています。

なお、運送業の委託は、下請法上「役務提供委託」に該当します。ただし、委託する役務が「自ら用いる役務」か「他者に提供する役務」かで適用が分かれます。

例えば、メーカーが自社所有の製品を顧客に届ける場合は「自ら用いる役務」となり、下請法の対象外ですが、一方、運送中の製品の所有権が顧客に移っており、メーカーが顧客から有償で運送を請け負い、外部運送業者に委託する場合は「役務提供委託」に該当し、下請法の対象となります。また、親事業者と下請事業者の資本金額によって適用範囲が決まります(資本金要件)。

親事業者には、契約内容を記載した書面の交付義務、下請代金の支払期日を定める義務、書類の作成・保存義務、遅延利息の支払義務などが課されます。

禁止行為には、下請代金の減額、返品、買いたたき、報復措置、不当な経済上の利益の提供要請などがあります。例えば、運送業者に対して十分な協議なく一方的に著しく低い運送代金を設定することは「買いたたき」に該当し、下請法違反となる可能性があります。

顧問弁護士ができること

顧問弁護士は、トラブルが発生した後の事後対応だけでなく、トラブルを未然に防ぐ予防法務の観点から、運送業の経営を多角的にサポートします。日常的に相談できる法律の専門家がいることは、経営者にとって大きな安心材料となり、迅速な意思決定を可能にします。

契約書の作成・リーガルチェック

運送業の顧問弁護士は、荷主との「運送契約書」や下請け会社との「運送委託契約書」など、事業運営に不可欠な各種契約書を作成・チェックします。口約束や市販の雛形をそのまま使うのではなく、運送業の実態に合わせ、貨物事故発生時の責任分担、遅延損害金の規定、料金改定の条項などを明確に定めます。これにより、将来起こりうる取引先との紛争リスクを大幅に軽減することができます。顧問弁護士によるリーガルチェックは、不利な契約を締結してしまうことを防ぐための重要な防衛策です。

就業規則の見直し・整備

運送業の労務トラブルを防ぐためには、就業規則の整備が極めて重要です。

特に、2024年問題に対応するため、時間外労働に関する36協定の見直しや、ドライバーの労働時間を正確に管理するための規定を設ける必要があります。また、歩合給制度や固定残業代制度を導入している場合は、その計算方法や支給条件を就業規則および賃金規程に明確に記載し、法的な有効性を確保しなければなりません。顧問弁護士は、最新の法改正や裁判例を踏まえ、それぞれの運送会社の実情に合った就業規則を作成し、労務リスクの予防に貢献します。

コンプライアンス体制の構築支援

コンプライアンス(法令遵守)は、現代の企業経営において不可欠な要素です。

運送業においては、労働基準法、貨物自動車運送事業法、道路交通法など、遵守すべき法令が多岐にわたります。顧問弁護士は、これらの法令を遵守するための社内体制の構築を支援します。例えば、ドライバーへの安全教育の実施、アルコールチェックの徹底、労働時間管理の適正化などについて法的な助言を行い、行政による監査や処分を未然に防ぎます。コンプライアンスを徹底することは、企業の社会的信用を維持し、持続的な成長を遂げるための基盤となります。

代理人としての交渉・法的手続

取引先との料金未払いトラブルや、交通事故の被害者との示談交渉など、紛争が現実のものとなった場合、顧問弁護士は会社の代理人として相手方との交渉の窓口に立ちます。

経営者自身が直接交渉の矢面に立つ精神的・時間的負担を軽減し、事業に専念できる環境を整えます。法律の専門家である弁護士が交渉することで、法的な根拠に基づいた主張を展開でき、有利な条件での解決が期待できます。交渉が決裂した場合には、訴訟などの法的手続にスムーズに移行することが可能です。

労働審判・訴訟対応

従業員からの未払い残業代請求や不当解雇を巡る主張が、労働審判や訴訟に発展した場合、顧問弁護士は会社の代理人として、法廷で会社の正当性を主張・立証します。労働審判は、迅速な解決を目指す手続きですが、専門的な知識と準備がなければ、会社にとって不利な結果になりかねません。顧問弁護士は、これまでの経緯を整理し、証拠を収集・分析した上で、説得力のある主張書面を作成し、審判や裁判に臨みます。日常的に会社の状況を把握している顧問弁護士であれば、より迅速かつ的確な対応が可能です。

運送業の経営者で、顧問弁護士をお探しなら宇都宮東法律事務所まで

運送業を取り巻く経営環境は、2024年問題を契機に大きな変革期を迎えています。ドライバーの労働時間短縮により、輸送力不足が懸念されており、2030年度には34%の輸送力が不足する可能性が指摘されているからです。

労務管理の複雑化、コンプライアンス遵守の要請の高まり、そして後を絶たない交通事故や取引トラブルなど、法的なリスクは増大する一方です。

このような状況下で、運送業に精通した顧問弁護士の存在は、貴社の経営を守り、さらなる発展を遂げるための強力なパートナーとなり得ます。トラブルが発生してから弁護士を探すのでは、対応が後手に回り、損失が拡大してしまう可能性があります。平時から気軽に相談できる顧問弁護士がいることで、リスクを未然に防ぎ、迅速かつ適切な初動対応が可能になります。

宇都宮東法律事務所は、これまで契約書作成、労務問題、交通事故対応など、幅広い分野で運送業の経営をサポートしてまいりました。運送業界特有の課題を深く理解し、それぞれの企業様の実情に合わせた、実践的なリーガルサービスを提供することが可能です。運送業界の経営者の方は、是非一度お問い合わせください。