問題社員を放置した場合の3つのリスクと適切に対応する手順を解説

企業経営において従業員は“人財”と言われるように重要な資産です。一方で、業務や職場での人間関係において周りに著しく迷惑をかける「問題社員」を採用してしまう場合や、労働環境の変化によって従業員が問題社員化するケースは珍しくありません。また、そのような問題社員を放置していると周囲の従業員や企業の評判に悪影響を及ぼしかねないため、放置するのではなく適切な指導や処分といった対処を行う必要があります。それに加えて、問題社員の対応は適切な手順を踏まなければ訴訟などのトラブルに発展する恐れがあります。

そこで本記事では、問題社員を放置したときのリスクや適切な対応方法の流れを解説します。

放置は危険!会社を悩ます問題社員によくある特徴とは?

「問題社員」という言葉に法律上の定義はありませんが、一般的には勤務態度が悪かったりハラスメント行為をしたりといった問題行動を起こす従業員のことを指します。

モンスター社員とも呼ばれ、次のような行為をする社員が例にあげられます。

・パワハラやセクハラを多発している

・会社や上司の指示・命令に従わない

・勤務態度が悪くルールを無視する(無断遅刻や不要な残業など)

・円滑なコミュニケーションを取らない

・同僚や会社に対して悪質な誹謗中傷を行う

・企業が求める能力を有していない

このように、職場内や取引先の人たちに、著しく迷惑をかける恐れがある従業員を一般的に「問題社員」と定義しています。

問題社員を放置するリスク

他の従業員に悪影響を及ぼす

社内に問題社員がいることで、他の従業員の精神衛生や業務量に悪影響を及ぼします。問題行動によって周囲の従業員が余計な対応に追われることになり、生産性が落ちるケースや不真面目な勤務態度を見せられることにより、優秀な社員がモチベーションを失ってしまうケースが考えられます。また、ハラスメントなどのトラブルや、悪口や嫌味といった悪質な誹謗中傷を引き起こして職場内の円滑な人間関係を壊すこともあります。

企業には従業員の職場環境を守る安全配慮義務が存在するため、他の従業員の業務に支障をきたさないように、問題社員には早急に対応しなければなりません。

取引先への迷惑行為

問題社員は、社内だけでなく社外にも悪影響を及ぼす可能性があります。

請求書にミスがあり誤った金額を請求した

納期管理ができていないことで取引先の信頼を損なう

営業時に先方にとって失礼な発言をする

取引を打ち切られる事態になると、自社の損害も大きいでしょう。

チーム内でミスをカバーできる場合は被害を少なく抑えることができますが、その分他の従業員にしわ寄せがくる結果にもつながります。社外に迷惑をかけると事態を納めるために多大な労力を割くことになるため、事前の予防策が重要です。

問題社員からの訴訟による企業イメージの低下

問題社員の中には自分が正しいと考えていることも多く、対応を誤るとすぐに訴訟を起こされるリスクがあります。訴訟の対応は企業にとって大きな負担が発生し、社外からは「訴訟を起こされているような企業」という見られ方をするため、企業イメージの悪化にもつながりかねません。

穏便に対応を進め、もしも訴訟を起こされても対処できるように準備をしておくことが重要です。

問題社員に対する適切な対応方法の3ステップ

問題社員の対応は、初めから解雇してしまえば簡単に解決すると感じるかもしれません。

しかし、法令上の問題があるため、いきなり解雇することは非常に難しいことが実情です。

適切なステップを踏んで進める必要があり、問題社員への対応は主に以下のような流れで行います。

・業務報告や指導記録票を作成して面談を行う

・注意書・指導書を交付する

・退職勧奨や懲戒処分をする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務報告や指導記録票を作成して面談を行う

問題社員の対応を進めるにあたって、まずは業務報告の提出や指導記録票の作成を行います。企業として適切な指導を行ったという法的な根拠を残すことが目的です。

本人の自己評価と会社側の評価が一致していることを確かめるため、業務報告や指導記録票をもとに面談を行うことも重要です。面談の内容も必ず記録しましょう。

記録内容は必ず責任者がチェックして、指導内容や改善状況を把握しておくことを推奨しております。

注意書・指導書を交付する

指導や面談を行っても改善が見られない場合は、注意書や指導書を問題社員に対して交付します。これは、文書で会社側の指導の意思を示すことで、より強く改善を促すためです。書類には、就業規則への違反内容や改善点を具体的に記載します。そして、本人が受領したことを証拠に残すため、署名欄を作ることが重要です。注意書や指導書は受け取っていないという、問題社員側からの反論を予防しなければなりません。

口頭での指導では効果が薄いと感じたならば、注意書や指導書でより強く改善を促しましょう。

退職勧奨や懲戒処分をする

業務の中でできる限りの指導を行っても改善が見られない場合は処分を実施することを検討しましょう。まずは減給や降格などの軽微な懲戒処分を行い、能力に問題がある場合は配置転換を検討します。企業が従業員の適性を判断していないとして不当解雇の理由になり得るため、配置転換の過程は重要です。

そして、問題社員を辞めさせようと検討する段階でもいきなり解雇をするのではなく、まずは退職勧奨を行います。退職勧奨とは、会社から従業員に退職を促し、従業員側から退職届を提出してもらう方法です。同意の上で退職届を出す形となるため、訴訟に発展しにくい点が魅力といえます。

退職勧奨にも応じない場合は懲戒解雇に踏み切ることになります。ここまでの過程を踏んで指導を行っていることにより、訴訟に発展しても解雇の正当性を立証できることが重要です。

問題社員問題を弁護士に相談いただくメリット

対応策への専門的なアドバイス

問題社員への対応を弁護士に相談することで、法的観点から専門的なアドバイスを受けることができます。指導の証拠となる書類作成や懲戒処分の妥当性など、対処方法に法的な問題がないかを専門家が判断することで、トラブルを最小限に抑えることが可能です。

就業規則の改善や労務管理の見直しのサポートをしてくれる点もメリットといえます。

労務紛争に発展した場合のサポート

問題社員への対応については、問題社員側から訴えられたときに適法性を争われる事態になりかねません。そこで、事前に弁護士に対応を相談しておくことで、もし訴訟に発展した場合も手続きを一任できます。また、事情を一から話す必要がないので初動を早くできることにより、被害を最小限に抑えられるといったメリットも挙げられます。

まとめ

問題社員が職場にいる場合、対処せず放置していると社内外問わず、様々な悪影響が起こりかねません。適切な指導を行いながら、法的な手続きを着実に進める必要があります。実際に指導や処分を検討する際には、弁護士による法的観点からのアドバイスを受けることを推奨いたします。

問題社員の対応に関してお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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