セクハラに対して企業が取るべき対応とは?放置するリスクや注意点を解説

セクハラはどの職場でも起こり得る問題であるため、企業は効果的な予防策を講じたり、セクハラ発生時の体制を整えたりする必要があります。対応が不十分でセクハラの被害が深刻化すれば、訴訟リスクが生じたり、企業イメージの低下、企業内の士気低下に繋がったりする可能性が高まります。本記事では、セクハラに対して企業が取るべき対応や予防策について解説します。

セクハラとは

セクハラとは「セクシュアル・ハラスメント」の略であり、相手の意に反した性的言動を行うことによって、相手の尊厳を傷付けたり、不利益を与えたりすることを意味します。

セクシュアルハラスメントの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を斟酌する必要があり ます。

具体例

セクハラの具体例としては以下のようなケースが挙げられます。

・不必要に身体に接触する

・身体的な特徴を話題にする

・卑猥なポスターを職場に掲示する

・デートや食事にしつこく誘う

・性別を理由にお茶汲みや掃除を強いる

・性別を理由に重い荷物を持たせる

・性的な誘いを断った部下を左遷させる

セクハラが問題視されるようになった当初は、もっぱら男性から女性に対する言動が注視されていました。しかし、現在では女性から男性に対しての言動や、同性間の言動もセクハラの対象であることに注意が必要です。

セクハラが企業にもたらすリスク

優秀な人材の離職

セクハラを原因として、優秀な人材が離職する可能性があります。優秀な従業員本人が被害を受けた場合は勿論のこと、セクハラの発生による職場環境の悪化による離職も考えられます。離職が相次ぐと業務への悪影響が大きくなり、更なる不満が生じて悪循環に陥る可能性があります。

従業員のモチベーションの低下

セクハラが発生し、快適に働くことができない環境では、従業員のモチベーションが低下しかねません。士気が低下すると職場全体の生産性にも影響が出るため、セクハラへの適切な対応は非常に重要です。

訴訟リスク

セクハラを企業内で適切に解決できなかった場合、被害者が訴訟を起こす可能性があります。これは、被害者と加害者の間の紛争だけに留まらず、企業側も以下のような責任を問われます。

・従業員が損害を発生させた場合に連帯して責任を負う使用者責任(民法715条)

・安全で働きやすい職場環境を作る安全配慮義務(労働契約法5条)

企業としての対応が不十分であれば、これらの法的義務に違反したとして、被害者や他の従業員から損害賠償請求を起こされる可能性があります。

企業イメージの低下

セクハラが発生したことを世間に知られると、企業イメージの低下に繋がります。企業の予防策や対応が不十分であることが原因ならば、さらに悪い印象を抱かれるでしょう。セクハラへの対策に企業が取り組むことは、男女雇用機会均等法により法律上の義務として定められています。企業イメージを守るためには、セクハラに対応できる体制の構築が欠かせません。

セクハラ発生時の適切な対応

被害者・加害者・周囲の人間からの聞き取りによる現状の確認

セクハラが発生した場合、まずは聞き取り調査を実施し、現状確認を進めましょう。被害者の意見を真摯に聞くことはもちろん、事実確認には客観的な証拠が不可欠です。被害者だけでなく、加害者や関係者の話を幅広く収集することが重要です。この際、当該行為について日時や場所など具体的に聞き取りをすることが重要です。

適切な指導

セクハラの事実が確認された場合、加害者に対して適切な指導を行う必要があります。

言動の問題点を指摘し、会社としての方針を伝えることが重要です。また、指導では加害者自身に再発防止策を考えさせ、提示させることで、よりセクハラへの認識を深めさせることも大切です。

懲戒処分

注意・指導を行っても改善が見られない場合は、懲戒処分を検討する必要があります。

懲戒処分は、セクハラの程度に応じて適切な処分を選択する必要があります。被害の程度に対して重すぎる処分をしてしまうと、加害者側から訴えられて処分が無効になる可能性があります。反対に軽すぎる処罰では、加害者への制裁や他の従業員に対する抑止力の効果が薄れてしまいます。懲戒処分の際には、弁明の機会を与えることが必要となるので注意が必要です。

企業が取り組むべきセクハラ対策

就業規則の整備

セクハラを予防するためには、就業規則を整備して企業としての対処方針を明確に示すことが重要です。加害者に対する処分等を明記することで、従業員への抑止効果を見込める上に、セクハラが発生した際にもスムーズな対応を行うことができます。就業規則で企業の姿勢が示されることで、従業員からの信頼も高まるでしょう。なお、作成した就業規則の内容は、従業員に周知することが必要です。就業規則に委任規定を設けた上で、詳細を別規定に定めるという方法でも別規定も就業規則に含まれます。

具体的には、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメント があってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することが必要となります。

周知・啓発は、例えば、管理職層を中心に階層別に 分けて研修を実施する、正規労働者およびパート、アルバイト、派遣労働者などの非正規雇用社員を対象に研修を実施する、新入社員の入社時期、異動の多い時期に合わせて研修を実施するなどにより、すべての労働者に対して周知を図る工夫をしましょう。

相談窓口の設置

相談窓口の設置は、有効なセクハラ対策の一環です。セクハラの発生を企業が早期に発見することで、被害の拡大を防止できます。社内窓口しかない場合は、自分の評価や情報漏洩を懸念して相談を躊躇する可能性があるため、法律事務所などの外部窓口を設置し、より相談しやすい環境を作ることも重要です。

窓口は、形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいいます。 このためには、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことと、この点が労働者に周知されていることが必要です。 相談は面談だけでなく、電話、メールなど複数の方法で受けられるよう工夫し、相談の結果、必要に応じて人事担当者および相談者の上司と連絡を取るなど、相談内容・状況に即した適切な対応がとれるようフォローの体制を考えておくことが望ましいでしょう。

従業員への研修の実施

セクハラを予防するためには、従業員のセクハラに対する適切な理解が欠かせません。定期的に従業員に向けた研修を行い、セクハラに対する理解の増進を図りましょう。具体的にどのような行為がセクハラに該当するかということや、セクハラへの企業の対応方針や許容しない姿勢を明確に伝えることが重要です。

弁護士に依頼するメリット

法的なアドバイス

セクハラの対応について弁護士に相談することで、法的な観点から専門的なアドバイスを受けることができます。弁護士であれば訴訟に発展した際のリスクを踏まえ、具体的な証拠確保の検討や、事前のアドバイスが可能です。セクハラ対応には、法律や過去の裁判例に基づく知識が不可欠です。対応が遅れたり判断を誤ったりすれば、訴訟を起こされるリスクもあるため、状況に応じた適切な対応を進めるために、弁護士のアドバイスが重要となります。

訴訟・示談交渉

当事者間で紛争が起こった場合や、企業に損害賠償請求を起こされた場合は、訴訟対応をしなければなりません。法的手続きは複雑で時間と労力がかかります。会社で対応するとなると、通常業務に加えて対応しなければなりませんが、弁護士に任せることで、その労力や時間を削減できます。

和解や示談交渉には専門的な知識と経験が必要であり、これなくして交渉等を行った場合、その記載内容の不備が後日訴訟等で指摘され不利な状況になるなど、思わず不利益を被ってしまうこともあります。しかし、この点、弁護士に依頼することで安心して紛争解決に臨めます。

就業規則の整備

弁護士に相談すれば、就業規則の整備についてアドバイスを受けることも可能です。弁護士であれば、法的に適切な内容であることをチェックできる上に、専門的な知見から訴訟に発展した際でも会社側に大きな不利益をもたらさないよう、規則の内容を明確化し、より効果的な規定を策定することができます。

社内研修の実施

弁護士にセクハラに関する社内研修を実施してもらうことも可能です。専門的な知識・経験を持った弁護士に説得力のある説明をしてもらうことで、従業員の理解もより深まることが期待できます。

顧問弁護士として顧問契約の範囲内で、ご希望の研修に応じることが可能です。

セクハラをする従業員にお悩みの方は当事務所にご相談ください

セクハラが発生した場合、企業には訴訟のリスクやイメージの低下、職場環境の悪化など、多くのリスクが生じます。そのため、適切な予防策を講じ、セクハラが発生した際には迅速かつ適切な対応を取ることが重要です。当事務所では、労務問題の実績と経験が豊富な弁護士が、予防策の策定から問題解決まで幅広くサポートいたします。セクハラをする従業員にお悩みの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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