ハラスメントについて その3(法的責任)
前回までハラスメントとは何かについて話をしてきました。
今回はまず、ハラスメントを行った者の法的責任について、お話していきます。
①民事上の損害賠償責任
具体的には不法行為による損害賠償責任(民法第709条)として損害賠償を受けることが考えれられます。精神的損害による慰謝料の他、相手方の負担した弁護士費用等も負担させられる可能性があり、損害賠償の金額が高額となる場合もあります。
② 刑事処分について
行為が悪質な場合には刑事処分も想定されます。
具体的には、
強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)、名誉棄損罪(3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)、脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
の該当可能性が挙げられます。
③会社内の懲戒処分について
ハラスメントを行った従業員に対しては会社が懲戒処分をすることになります。
その場合には事案が悪質な場合には最も重い「懲戒解雇」処分も検討されます。懲戒解雇処分を受けると、退職金が支給されない、再就職が困難になるなど、今後の自分の人生だけでなく家族の人生にもかかわってくる危険性が出てきます。
次に、ハラスメントを行った会社の責任についてお話していきます。
会社は従業員の職場環境を改善し良好に保つよう配慮すべき義務(職場環境配慮義務)を負っています。このため、パワハラを行った従業員の雇い主としての責任として、ほとんどの場合には民法上の使用者責任を根拠に被害者から会社に対して連帯責任(損害賠償責任)を追及されます。
なお、会社が追うのは法的責任だけではありません。それ以外にも以下のようなリスクを負ってしまいますので注意が必要です。
・法的責任以外のリスク
・会社内外でのレピュテーションリスク
・人材の流出や確保困難
・関係者のメンタルヘルス問題④従業員のモチベーション低下など
最後にハラスメントが起きた場合の対処法についてです。
ハラスメント問題が生じてしまったときは、すみやかに問題解決を行うことが重要です。
具体的には以下の流れを検討します。
相談・苦情
↓
相談窓口への通報
↓
ヒアリング(本人、相手、第三者)実施
↓
事実関係の有無の確定
↓
・誤解であると判断した場合には本人に説明
・事実関係ありと判断した場合には、
ハラスメント対策委員会による協議→事情聴取→会社の方針決定(懲戒処分の検討)
↓
解決・再発防止措置の決定
このような方法をとってもなお、解決できず、紛争に発展した場合には、
・労働局のあっせん手続
・代理人弁護士による裁判外における話合いによる解決
・違法行為に対する損害賠償請求の裁判等
も考えられます。
このように、ハラスメントが発生した場合に、解決のために会社が負う時間的ロスは少なくありません。
今回は法的責任を含め、ハラスメントがもたらす弊害とその対処法についてお話してきました。
ハラスメントがもたらすリスクが重大であることがお分かりいただけましたでしょうか。次回はハラスメントの回の最後として予防策についてお話してきます。
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